top of page

連載コラム/非常食の概念を変える!キャンプ飯で考える「食の備え」

非常食と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?乾パンやアルファ米、レトルトカレーやインスタントラーメンなど、賞味期限が長くて保存性に優れた食品が思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。

しかし、災害時こそ本当に必要なのは「心の満足感」や「温かさ」、「美味しいと感じられること」なのです。被災時は心も身体も大きなストレスを抱えています。そんな中で、いつものように美味しく食べられることは、それだけで人の心を落ち着かせ、大きな支えとなります。

そこで注目したいのが、アウトドアやキャンプの中で生まれた「キャンプ飯」の知恵です。限られた道具や環境の中でも、美味しくて満足感のある食事をつくる技術や工夫は、まさに防災時の「生きる力」そのもの。今回は、そんなキャンプ飯の視点から、私たちが日常の中でできる“食の備え”についてご紹介していきます。


なぜキャンプ飯が防災に役立つのか?

キャンプでは、ガスや水、冷蔵庫といった生活インフラが基本的に使えません。だからこそ、工夫しながら調理する知恵が自然と身につきます。限られた食材と器具で、どうすれば美味しい食事をつくれるか。この発想こそが、非常時にも役立つ“応用力”になります。

たとえば、少ない材料で栄養バランスを考えたメニューを組み立てたり、洗い物を極力減らす調理方法を選んだり、火や水がなくてもできる工夫を試したり。こうした力は、避難生活やライフラインが止まった状況でも大いに活きてきます。

また、「食べること」は単なる栄養補給ではありません。災害時には、あたたかいご飯、いつもと同じ味、誰かと一緒に食べるという経験が、気持ちの支えや安心感につながるのです。


保存がきくキャンプ食材とは?

キャンプでは、冷蔵庫に頼れない状況が普通です。だからこそ、保存がきく食材を上手く使いこなすことが大切です。以下のような常温で保管できる食材は、防災の備えにも最適です。

たとえば、オートミールや乾麺、切り餅、フリーズドライの野菜、各種の缶詰。これらは日持ちがするうえに、簡単な調理で主食にもおかずにもなります。最近では、無添加で自然素材を使ったレトルト食品も増え、アレルギー対応の商品も手に入れやすくなっています。

また、アウトドアでは「ローリングストック」という考え方も基本。これは、「備蓄して終わり」ではなく、日常でも消費しながら定期的に補充していく方法です。これなら賞味期限切れを防ぎつつ、いつも新しい備蓄を持てますし、キャンプでも使えるので一石二鳥です。


簡単で美味しい!キャンプ飯レシピ

非常時にはガスや電気、水道が使えない可能性があります。そこでここでは、できるだけ簡単で調理器具も少なく、しかも美味しいレシピをいくつかご紹介します。

●和風だし雑炊(お湯だけでOK)アルファ米と乾燥わかめ、フリーズドライの味噌汁を使い、お湯を注ぐだけ。消化がよく、子どもから高齢者まで食べやすい一品です。

●サバ缶トマトパスタ鍋にトマトジュースを沸かし、乾燥パスタを直接入れて柔らかく煮ます。そこにサバの水煮缶を加えて塩で味を整えれば完成。栄養満点で洗い物も少なく済みます。

●缶詰ホットサンド食パンに焼き鳥缶とチーズを挟み、ホットサンドメーカーで焼くだけ。香ばしさととろけるチーズで気持ちも明るくなります。

●即席クリーミーリゾットオートミールに粉チーズ、乾燥野菜、コンソメを加え、熱湯を注いで3分。リッチな味わいで、腹持ちも◎。洗い物が出にくいのも利点です。


誰でも食べられる優しさを

災害時の食事で忘れてはいけないのが「誰でも食べられること」。特に小さなお子さんや高齢者の方にとって、硬すぎる、辛すぎる、重すぎる食事は負担になってしまいます。

そのため、雑炊やリゾットのように柔らかくて消化が良い料理が重宝されます。また、アレルギーに配慮した食品をあらかじめ備えておくことも重要です。最近では、小麦や乳製品を使わないレトルト食品も増えており、防災対応の選択肢が広がっています。

さらに、食事は「心を癒やす時間」でもあります。鮮やかな色合いの食材を使ったり、甘みのあるドライフルーツやお菓子を加えることで、食べる楽しみを忘れない工夫ができます。


道具がなくてもできる調理テクニック

道具が揃っていない、燃料が限られている。そんな時にも頼れる調理方法がいくつかあります。

たとえば「ポリ袋調理」。耐熱性のある食品用ポリ袋に材料と調味料を入れ、湯煎で温めるだけで、雑炊やスープが作れます。洗い物も出ず、衛生的で一石三鳥。

また、小さな鍋やシェラカップ、メスティンなど、アウトドアで使われる調理器具は、非常時にも非常に役立ちます。炊飯や煮物、蒸し料理にも対応でき、しかも軽くてかさばらない。

燃料面でも、カセットガス以外に、固形燃料やアルコールストーブ、薪ストーブなどの選択肢があれば、状況に応じて調理が可能になります。


「防災」を日常に。キャンプから始めよう

非常時にいきなりすべてをこなすのは難しい。だからこそ、日常の中で“楽しみながら備える”ことが重要です。

キャンプはその最たる例。火起こしから炊飯、料理、片付けまで一連の流れを通して、自然と「生きる力」が身につきます。子どもにとっても、大人にとっても、最高の学び場になります。

ごはんを炊ける、食材を無駄なく使える、器具がなくても工夫できる。こうした力は、きっといつか誰かの命を支えるはずです。


「備え」を前向きに、楽しく

防災の準備というと、つい「面倒」「大変」という気持ちが先立ってしまいます。けれど、アウトドアやキャンプの知恵を活かせば、それは“楽しい日常”の延長として取り組むことができます。

美味しく、楽しく、工夫して食べること。それは災害時でも私たちの命と心を守ってくれる、最も身近で、確実な備えのひとつです。

この週末、あなたも家族で「防災キャンプ飯」を試してみませんか?防災は、「やらなきゃ」ではなく、「やってみたい」から始めていきましょう。




Comments


bottom of page