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防災キャンプ連載コラム/テントとタープで作る「命のシェルター」

~雨・風・寒さから命を守る、アウトドアの知恵と防災の力~

災害は、ある日突然、私たちの日常を奪ってしまうことがあります。地震や台風、大雨、雪害…。それらは予告なしに、そして時に、家という「安全な居場所」すら使えなくなる状況をもたらします。そんなとき、命を守るために最優先で必要なのが「シェルター」、つまり、安全に過ごせる“居場所”です。

防災キャンプでは、「野外でどう命を守るか」という視点から、テントやタープを使ったシェルター作りを学びます。普段のアウトドアで身につけたスキルが、非常時にはそのまま命綱になる。今回は、雨・風・寒さから身を守るための“命のシェルター”づくりの基本と応用をご紹介します。


◉ 命を守るための第一歩:体温を保つ場所を作る

私たちの体は、体温が35℃を下回ると低体温症のリスクが高まります。特に雨に濡れたり、風にさらされたりすることで、急激に体温が奪われてしまうのです。災害時にはエネルギー源(食事)も限られており、体の防御力も下がりがち。だからこそ、「外気に直接さらされない空間」を確保することが、命を守るうえでとても重要です。

テントやタープは、外気を遮り、地面の冷気や雨を防ぐ“命のシェルター”として機能します。特に寒冷地や夜間の避難では、こうした装備があるかどうかが生死を分けることもあるのです。



◉ テント設営の基本と防災の視点

テントは、風雨や寒さから体を守るために非常に優れた装備です。しかし、設営の仕方や場所選びを間違えると、かえって危険な環境になることもあります。以下に、防災の視点を取り入れた設営の基本をまとめます。

◆ 設営場所の選び方

  • 水はけの良い場所を選ぶ:斜面の下やくぼ地、側溝のそばは避ける。

  • 風の影を利用する:建物や林の陰、背の高い構造物の風下など。

  • 地面に注意:アスファルトよりも芝生や土の方が断熱性に優れる。

◆ 設営のコツ

  • グランドシートは必須:地面からの冷気・湿気を遮断。ブルーシートでも代用可。

  • 張り綱は必ず張る:風で飛ばされたり倒れたりするのを防ぐ。

  • 結露対策として換気を:ベンチレーション(通気口)を開けておくことで、内部の湿気を減らし、快適性を保つ。

◆ 小さな工夫が大きな安心に

テントの入り口を風下に向けたり、入口付近に靴脱ぎスペースを作ったりするだけでも、快適性と安心感が増します。限られた資源・空間の中で「どう快適に過ごすか」も、防災の大切な要素です。



◉ タープは応用力のある“多機能素材”

テントと並んで頼りになるのが「タープ」です。1枚の防水布にポールやロープを組み合わせることで、屋根・壁・間仕切り・風除け・日除けなど、状況に応じた多彩な使い方が可能です。

◆ 基本的な張り方

  • Aフレーム型(屋根型):最も基本で、中央にロープを通して左右に垂らす形。

  • ウィング型(片流れ型):一方向に雨や風を逃す設営。風が強い日に有効。

  • スクエア張り:広い空間を確保でき、複数人の避難や物資置き場にも便利。

タープの下にグランドシートを敷けば、簡易的な避難スペースに。ポールの代わりに木や電柱を使うなど、現場の状況に応じて柔軟な対応が可能です。

緊急時には「代用品」でシェルターを作る

災害時、必ずしもテントやタープが手元にあるとは限りません。そんなときこそ、身近なものでシェルターを作る工夫が大切です。


◆ 代用品の例

  • ブルーシート + ロープ + 洗濯ばさみ:簡易のタープや屋根になる。

  • 段ボール:敷物・壁・断熱材として優秀。重ねて床にするとかなり暖かい。

  • 新聞紙:丸めて詰めれば断熱材になる。服の中に入れても防寒効果あり。

  • ゴミ袋やレインコート:防水素材として風雨を防げる。

こうした代用法は、実際にやってみることで理解が深まります。ワークショップや防災訓練でぜひ体験しておくと、いざというときにすぐ実行に移せるでしょう。



◉ 普段の「遊び」が非常時の「備え」になる

アウトドアでの経験は、防災における“生きる力”を自然に育ててくれます。タープの結び方、風向きの読み方、テントの設営や撤収の手順…。これらは一度体験するだけで、知識が「実感」として体に刻まれます。

防災キャンプでは、楽しみながらこうした技術を身につけることができます。「遊び」と「備え」を一体化させることで、子どもから大人まで、無理なく命を守る知恵が育まれていくのです。



◉ まとめ:安心できる“居場所”を自分で作る力を

「命を守る」とは、決して特別なスキルや高価な道具を持っていることではありません。大切なのは、自分の手で“安心できる場所”を作れる力。テントやタープ、そしてその代用品を使って、身の回りの環境を安全に整える工夫と知恵を持つことです。

いつものキャンプやアウトドア体験を通じて、楽しみながら「命を守る力」を育てていきましょう。

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