防災キャンプ連載コラム/キャンプやアウトドアで育む「防災リテラシー」
- akiyuki yamasaki
- 5 日前
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―もしもの時に、あなたを守る“自然との付き合い方”―
近年、「リテラシー(literacy)」という言葉を耳にする機会が増えてきました。リテラシーとは、本来「読み書き能力」を意味しますが、現代では「正しく理解し、活用する力」「物事に対する知識と判断力」という広い意味で使われています。例えば「情報リテラシー」や「メディアリテラシー」といった言葉もよく知られています。その中で近年注目されているのが「防災リテラシー」です。
◉ 防災リテラシーとは?
「防災リテラシー」とは、災害が起こったときに自分や大切な人の命を守るために必要な知識・判断力・行動力のことを指します。地震や台風、大雨や土砂災害など、自然災害が多い日本において、「防災グッズを持っているか」だけではなく、「そのときどう動くか」「どこに避難するか」「何を優先するべきか」など、自ら判断して行動できる力が問われます。
◉ “遊び”と“学び”の重なる場所にこそ、本質がある
キャンプやアウトドアは「楽しい非日常」として多くの人に愛されています。しかし、そこで得られる経験は、実は災害という“非日常の現実”においても生かすことができます。遊びながら学ぶ中で、防災の知識は単なる知識ではなく、体験として身につき、いざというときの行動力につながります。

なぜ?キャンプやアウトドアで「防災リテラシー」が育まれるのか
―自然体験から身につく“生きる力”―
災害大国・日本に暮らす私たちにとって、「防災リテラシー」は命を守るための大切な力です。では、この力をどうやって日常の中で育んでいけばよいのでしょうか?
その答えのひとつが、「キャンプ」や「アウトドア体験」の中にあります。
なぜ自然の中での活動が、災害への備えや対応力につながるのでしょうか?以下では、キャンプやアウトドアの具体的な行動や場面を通して、防災リテラシーがどのように育まれるかを詳しく紹介します。
1. 「当たり前がない」から、自分で考える力が育つ
キャンプでは、日常生活で当たり前のように使っている電気・ガス・水道・通信環境がありません。つまり、災害時と非常によく似た環境になります。
たとえば、
水はどうやって手に入れるか?
暗くなったらどうする?
食材が傷まないようにするには?
雨が降ってきたらどう避ける?
こうした場面で「自分で考え、判断し、行動する」ことが求められます。これはそのまま、災害時の行動判断力につながります。
2. 不便を楽しむ中で“代替手段”を体験的に学べる
キャンプでは、普段使っている便利な家電が使えません。でもその代わりに、
ガスバーナーや焚き火で調理する
ヘッドライトやランタンで明かりを取る
タープで雨をしのぐ
クーラーボックスで食料を保存する
といった、“代替手段”を実際に使って体験する機会があります。これは災害時、物資やライフラインが限られている状況で、「何が使えるか」「どう工夫するか」を判断する大きなヒントになります。

3. 設営や準備を通して、サバイバル技術が自然と身につく
テントやタープの設営、ロープワーク、火おこし、簡易トイレの使い方など…一見すると「アウトドアスキル」ですが、これは災害時の一時避難生活に直結するスキルでもあります。
たとえば、
テント設営は、避難所が満員のときの屋外避難生活に役立ち、
火起こしは、停電時の暖房や調理手段に、
ロープの結び方は、荷物の固定やシート設置に活用できます。
4. 自然の変化を肌で感じることで「直感力」が養われる
アウトドアでは、天候や気温、風の変化に常に注意を払う必要があります。雨の気配、風向きの変化、雲の動き、鳥や虫の様子…。そうした自然の“サイン”に敏感になることで、「危険を察知する感覚(直感)」が鍛えられます。
これは、地震の前兆や大雨による土砂災害のリスクを察知する感覚にもつながる貴重な力です。
5. 仲間と協力することで、災害時のチーム力が育つ
キャンプでは、テント設営や料理、火起こしなど、協力してこなす作業が多くあります。その中で、
誰が何を担当するか
どうやって声をかけるか
お互いの様子に気づけるか
といった**「チームで動く力」や「他者を思いやる力」**が自然と育まれます。これは災害時に避難所や地域で協力し合って生き延びるために、欠かせない能力です。

◉ まとめ
キャンプやアウトドアは、単なる非日常のレジャー体験にとどまりません。自然の中で過ごす時間には、私たちが普段の暮らしの中で見落としがちな「生きる力」を育てるヒントがたくさん隠れています。便利なものが何もない環境だからこそ、自分の力で考え、工夫し、動くという行為が求められます。そしてその体験は、いつ起きるかわからない自然災害への備えとして、私たちの中に確かな自信と対応力を育ててくれます。
防災というと、「難しい」「特別な知識が必要」「専門家だけのもの」と感じる方もいるかもしれません。しかし、防災リテラシーとは決して特別な能力ではありません。日常生活や遊びの中にこそ、育てる機会があります。むしろ、楽しみながら身につけるほうが、実際の場面で役立つ“生きた知識”として機能するのです。
「もしも」のときに自分の命を守るために、そして周りの大切な人たちを守るために。まずはできることから始めてみましょう。キャンプに出かけるとき、少しだけ視点を変えて、「これは災害時にも役立つかな?」と想像してみてください。そのひとつひとつが、防災リテラシーを育む大きな一歩になります。
自然と向き合うことは、自分自身と向き合うことでもあります。あなたの中に眠る「生き抜く力」を、キャンプやアウトドアの体験を通して、楽しく、無理なく育てていきましょう。

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