和歌山県での「女性視点で考える防災キャンプワークショップ」を終えて

9月10日・11日の2日間、和歌山親愛大学のキャンパスを会場に、災害時における「女性視点」をテーマとした防災キャンプワークショップを実施しました。
今回の開催にあたり、まず感謝をお伝えしたいのが、和歌山県 共生社会推進部 こども家庭局 多様な生き方支援課のご担当者の皆さまです。
今回のワークショップは、突然決まったものではありません。
昨年7月頃から、どのような内容であれば参加される皆さんにとって本当に意味のある学びになるのか、災害時における女性の課題をどのように取り上げるのか、そして「聞いて終わる防災講座」ではなく、実際に考え、体験し、行動につながる内容にするためにはどうすればよいのか。
長い時間をかけて担当者の方々と打ち合わせを重ねながら、一つひとつ内容を組み立ててきました。
その積み重ねがあったからこそ、今回の2日間を迎えることができたと感じています。
改めまして、ご担当いただいた皆さま、そして開催に関わってくださったすべての皆さまに心より感謝申し上げます。
「女性視点の防災」は、女性だけが知っていても意味がない
今回の大きなテーマは、災害時における「女性視点」でした。
参加者は女性が中心でしたが、男性の参加者にもご参加いただきました。
これは、私たち一般社団法人日本防災キャンプアウトドア協会が以前から大切にしている考え方でもあります。
女性視点の防災だからといって、女性だけが学べばよいわけではありません。
災害が起きたとき、避難所や地域、家庭、職場を動かしていくのは女性だけでも男性だけでもありません。
だからこそ、女性が災害時にどのような不安を感じるのか。
避難生活の中でどのような困りごとが生まれやすいのか。
プライバシー、衛生、着替え、トイレ、防犯、子育て、介護、生理用品、相談のしやすさなど、普段は表面化しにくい課題について、立場を超えて共有していく必要があります。
「女性視点」を女性だけの問題にしないこと。
これは今回、特に伝えたかったことの一つです。

防災は「知識」だけでは身につかない
2日間のワークショップでは、座学だけではなく、グループワークや実技を多く取り入れました。
避難場所と避難所の違いについて考えること。
安心して生活できる避難所とはどのような場所なのかをグループで話し合うこと。
簡易シェルターを設営すること。
ロープを実際に結んでみること。
非常食を食べながら、災害時に「食べ続けられる食事」とは何かを考えること。
火を起こすこと。
ナイフを安全に使うこと。
セルフディフェンスという考え方を通じて、自分の周囲を見ること、違和感に気づくこと、危険から離れること、必要なときに助けを求めることを考えること。
私たちの防災キャンプでは、「正解を教える」だけではなく、
「まず、やってみる。」ことを大切にしています。
実際にやってみると、
「思ったより難しい。」
「この方法ではうまくいかない。」
「こうした方が使いやすいのではないか。」
「子どもや高齢者だったらどうだろう。」
そんな気づきが次々と生まれます。
そして、その気づきを参加者同士で話し合う。
実はこの過程そのものが、防災において非常に重要だと考えています。
災害時には、教科書に書かれた通りの状況が起こるわけではありません。
その場にあるもの、その場にいる人、その時の天候や環境によって、必要な判断は変わります。
だからこそ必要なのは、知識を覚えることだけではなく、
「今ある状況の中で考え、工夫し、行動する力」なのです。
参加者の言葉から感じたこと
ワークショップ終了後、参加者の方がSNSで今回の学びについて紹介してくださいました。
そこには、
「防災キャンプは飽きがこないと思った」
という、とても印象的な言葉がありました。
また、
南海トラフ地震を「いつか来るもの」と考えるのではなく、「必ず来るもの」と考えて準備すること。
とにかく一度やってみること。
「ああしたらどうなるだろう」「こうすればできるのでは」と、実践しながら話し合うこと。
避難所では、一人ひとりが役割を持ち、みんなで乗り越えていくこと。
そうした内容を、参加者自身の言葉で受け取っていただいていました。
私たち講師側から伝えた言葉以上に、参加した方が自分自身で考え、自分の言葉に置き換えてくれていることに、大きな意味があると感じています。
防災教育は、講師の話を覚えてもらうことが目的ではありません。
参加した人が、
「自分だったらどうするだろう。」
と考え始めること。
そこからが、本当のスタートなのだと思います。

「何を学べばいいのかわからない」という人は多い
これまで全国各地で防災講座や防災キャンプを行ってきて、毎回感じることがあります。
参加される方の中には、もともと防災意識の高い方もたくさんいらっしゃいます。
今回も、防災士の資格を持つ方など、地域で防災に関わっている方が参加されていました。
一方で、
「災害が心配だけれど、何から始めればいいかわからない。」
「防災について勉強したいけれど、何を学べばいいのかわからない。」
という方が非常に多いことも事実です。
防災という言葉は、とても大きな言葉です。
地震、津波、豪雨、台風。
備蓄、避難、救命、避難所運営、地域防災。
学ぼうと思えば、いくらでも学ぶことがあります。
だからこそ、最初からすべてを覚えようとする必要はないと私たちは考えています。
まず一つやってみる。
一つ知る。
一つ家族と話してみる。
その小さな行動を積み重ねることが、防災への第一歩です。

一度きりのセミナーで終わらせない
私たちがワークショップや防災キャンプを開催するとき、最も大切にしていることの一つがあります。
それは、
「参加して終わりにしないこと」
です。
2日間参加してくださった皆さんにも、最後に一つお願いをしました。
今回学んだことを、大切な家族や身近な人、地域、職場で、何か一つでいいので伝えてください。
ロープの結び方でも構いません。
避難場所と避難所の違いでも構いません。
災害時には一人で行動しないということでも構いません。
避難所には女性の視点が必要だということでも構いません。
「今日、こんなことを知ったよ。」
その一言だけでもいい。
なぜなら、自分だけが知っている防災では、守れる命には限りがあるからです。
自分が学んだことを誰かに伝える。
その人がまた、別の誰かに伝える。
そうやって防災の知識や経験が地域の中に広がっていけば、災害が起きたときに助かる命を増やすことにつながります。
防災教育のゴールは、「知っている人」を増やすことではありません。
私たちが増やしたいのは、
「行動できる人」と「誰かに伝えられる人」です。
「備える」を、もっと身近なものに
今回の和歌山県での2日間は、座学、グループワーク、実技を組み合わせた、私たち日本防災キャンプアウトドア協会らしいワークショップになったのではないかと思います。
防災というと、難しい話や怖い災害の映像を思い浮かべる方も少なくありません。
しかし、防災は特別な人だけが取り組むものではありません。
身近な道具を使ってみる。
仲間と話し合う。
火を起こしてみる。
ロープを結んでみる。
食べてみる。
考えてみる。
失敗してみる。
そして、もう一度やってみる。
キャンプやアウトドアには、災害時に必要となる「生きる力」を、楽しみながら身につけるヒントがたくさんあります。
私たちが目指しているのは、
「楽しみながら備える」こと。
そして、
自助から共助へ、学びを人から人へつないでいくこと。



今回、和歌山で出会った皆さんが、それぞれの家庭、職場、地域に戻り、今回得た気づきの一つでも誰かに伝えてくださったなら、この2日間のワークショップはそこで終わりではありません。
そこからまた、新しい防災の輪が始まります。
参加してくださった皆さま。
開催に向けて長い期間準備を重ねてくださった和歌山県の皆さま。
会場をご提供いただいた和歌山親愛大学の皆さま。
そして今回のワークショップに関わってくださったすべての皆さま、本当にありがとうございました。
私たち一般社団法人日本防災キャンプアウトドア協会も、これからも「一度きりの防災教育」で終わることなく、地域の中に学びが残り、人から人へと伝わり、いざというときに一人でも多くの命を守れる防災教育を届けていきたいと思います。
防災を「聞くだけ」ではなく、「体験する」学びへ
一般社団法人日本防災キャンプアウトドア協会では、学校・自治体・企業・地域団体を対象に、キャンプやアウトドアの知識と技術を活用した体験型防災教育を実施しています。
女性視点の防災、親子防災、防災リーダー育成、企業BCP、防災キャンプ、避難所運営など、対象や地域の課題に合わせたプログラム設計が可能です。
「防災について何から始めればよいかわからない」「参加者が実際に体験できる防災講座を実施したい」「一度きりではなく、地域に学びが残る防災教育をつくりたい」
そのようなご相談もお気軽にお問い合わせください。
楽しみながら備える。そして、学んだことを次の誰かへつなぐ。
私たちは、防災を特別な知識ではなく、日常の中で使える「生きる力」として伝えていきます。



コメント