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冬の連載テーマ「命を守る“冬の防災力”」第4回:雪と孤立と、どう向き合うか

―災害時「助けが来ない時間」は、日本中で起こりうる ―

はじめに|「少しの雪」で止まる国、日本

日本は、世界的に見ても珍しい国です。南北に長く、山が多く、海に囲まれ、冬になると全国各地で雪が降る可能性があります。

しかし私たちは、どこかで「雪は一部の地域の話」「都心では大丈夫」という感覚を持っていないでしょうか。

現実は逆です。日本は、少ない雪で都市機能が一気に脆くなる国です。

数センチの積雪で、

  • 電車が止まり

  • 道路が麻痺し

  • 物流が滞り

  • 人の移動が遮断される

このとき起きているのは、「雪害」ではありません。孤立の始まりです。

画像出展:読売新聞オンライン

▪️日本の地政学が生む「雪への脆弱性」

日本は、地形的に次の特徴を持っています。

  • 山が多く、交通網が集中している

  • 都市部ほど“効率化”が進み、余白がない

  • 物流・医療・エネルギーが集中型

  • 日常は「止まらない前提」で設計されている

つまり日本の都市は、雪が降らない前提で成り立っているのです。

そのため、雪が少量でも降ると、

  • 通勤・通学が止まる

  • 病院へ行けない

  • 店に物が届かない

  • 支援が遅れる

こうして都市は、あっという間に「孤立状態」に近づきます。

▪️ 孤立は「山の中」だけの話ではない

孤立という言葉を聞くと、山間部や離島を思い浮かべがちです。しかし実際には、

  • マンションの高層階

  • 高架道路に囲まれた住宅地

  • 電車が止まった駅周辺

  • 大雪で動けなくなった都心部

これらも立派な「孤立空間」です。

都市の孤立は、人が多いからこそ、助け合いが見えにくいという特徴を持っています。

「誰かが助けてくれるはず」この思い込みが、行動を遅らせます。

画像出展:テレ朝NEWS-テレビ朝日より
画像出展:テレ朝NEWS-テレビ朝日より

▪️ 物流停止と救急遅延は同時に起こる

雪が降ると、最初に影響を受けるのは物流です。

  • コンビニやスーパーの商品が届かない

  • ガスボンベや灯油が手に入らない

  • 医薬品が不足する

そして、同時に起きるのが救急・医療の遅延です。

  • 救急車が渋滞にはまる

  • 病院まで辿り着けない

  • 医療スタッフが出勤できない

これは地方だけの問題ではなく、都市部でこそ深刻化しやすい現象です。

▪️「自助」だけでは都市の孤立は乗り越えられない

都市部では、

  • 隣人の顔を知らない

  • 助けを求めづらい

  • 迷惑をかけたくない

こうした文化が根強くあります。

しかし雪による孤立状態では、自助(自分で備える)だけでは限界が来ます。

  • 高齢者

  • 子育て世帯

  • 一人暮らし

  • 持病のある人

こうした人たちが「見えない孤立」に陥りやすいのが、都市の特徴です。

▪️都市でこそ必要な「声かけ」という共助

共助とは、特別なことではありません。

  • エレベーターでの「大丈夫ですか?」

  • 隣室への一言の声かけ

  • 管理人や自治会への情報共有

  • 玄関前の雪かき

雪の日のこうした行動は、都市の中に“人のつながり”を一時的に取り戻す行為です。

孤立を防ぐ最初の一歩は、顔を合わせ、言葉を交わすことです。

▪️防災キャンプが教えてくれる「孤立しない力」

防災キャンプの最大の価値は、知識や装備を増やすことではありません。

それは、「人は一人では生き延びられない」という現実を、安全な環境で体験できることにあります。

災害時の孤立は、物理的な問題だけではありません。本当に怖いのは、「心理的な孤立」です。

  • 誰に頼っていいかわからない

  • 迷惑をかけてはいけないと思ってしまう

  • 困っていても声を出せない

防災キャンプは、こうした心理的な壁を、体験を通じて壊していきます。


①「困る」ことを共有する訓練

防災キャンプでは、あえて不便な環境をつくります。

  • 暖房のない夜

  • 限られた水

  • 時間のかかる調理

  • 思うように進まない作業

ここで参加者は、自然とこうした言葉を口にします。

「ちょっと手伝ってもらっていいですか?」「これ、一緒にやった方が早いですね」「大丈夫ですか?」

これらはすべて、孤立を防ぐための言葉です。

防災キャンプは、「助けを求めること」「助け合うこと」を恥ずかしい行為ではなく、自然な行動として体に覚えさせる場なのです。



②役割が自然に生まれる仕組み

火起こし、水の確保、テント設営、食事づくり。これらは、一人では成立しません。

  • 火が得意な人

  • 段取りができる人

  • 子どもを見守る人

  • 周囲を気にかける人

防災キャンプでは、肩書きや年齢に関係なく役割が生まれます

これは災害時にそのまま起こることです。「この人に頼っていい」「自分はここを手伝える」

この感覚を事前に持っているかどうかで、孤立するか、つながるかが分かれます。


③「助ける側」「助けられる側」を行き来する経験

防災キャンプでは、誰もが一度は助けられ、誰もが一度は助けます。

  • 最初は何もできなかった人が、後で誰かを支える

  • 子どもが大人に教える場面もある

  • 高齢者が知恵を共有する場面もある

これにより参加者は、「助けられていい」「頼っていい」

という感覚を自然に身につけます。

都市の孤立を深刻にしているのは、「迷惑をかけてはいけない」という思い込みです。

防災キャンプは、それを安全に壊す場でもあります。


④情報を「共有する」ことが安全につながると知る

災害時に最も危険なのは、情報を一人で抱え込むことです。

防災キャンプでは、

  • 天候の変化

  • 体調の異変

  • 道具の不足

を必ず共有します。「寒くなってきた」「あの人、動きが鈍い」「水が足りないかも」

この“気づきを声に出す習慣”が、孤立を防ぎ、事故を未然に防ぎます。


⑤「孤立しない力」とは技術ではなく態度

私たちが伝えたいのは、ロープワークや火起こしだけではありません。

  • 声をかける

  • 相談する

  • 一緒に考える

  • 役割を引き受ける

これらはすべて態度(スタンス)です。

防災キャンプは、「助け合うことを当たり前にする文化」を体験する場なのです。

▪️まとめ|防災キャンプは「関係性の備え」

防災キャンプが教えてくれるのは、物資や技術以上に大切なもの。

それは、人と人との距離を縮める力です。

孤立しない力とは、「一人で何とかする力」ではなく、「一人にならない力」

日本防災キャンプアウトドア協会は、この力を育てるために、防災キャンプを続けています。

次回予告(第5回)

「子どもに伝えたい『冬を生きる力』」― 雪遊びは、最高の防災教育 ―


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