冬の連載テーマ「命を守る“冬の防災力”」第1回:冬の災害はなぜ危険なのか?
- akiyuki yamasaki

- 1月4日
- 読了時間: 4分
「地震より先に“寒さ”で命を落とす現実」
◉はじめに|冬は「静かに命を奪う季節」
私たちは「災害」と聞くと、まず地震や津波、土砂崩れといった“目に見える破壊”を思い浮かべます。しかし、冬の災害で本当に恐ろしいのは、建物の倒壊よりも、火災よりも、実はもっと静かで、もっと身近なものです。
それは「寒さ」です。
気温が低く、雪や氷に囲まれ、日照時間が短い冬。電気やガス、水道といったライフラインが止まった瞬間、私たちは一気に自然の中へと引き戻されます。暖房は止まり、明かりは消え、スマートフォンの充電もできなくなります。そこに吹き込む冷たい空気は、私たちの体温を容赦なく奪っていきます。
冬の災害は、派手さはありません。しかし、確実に、静かに、人の命を削っていく災害なのです。
◉冬の災害が「特に危険」と言われる理由
冬の災害には、他の季節とは異なる特徴があります。
1つ目は「低体温症」のリスクです。人の体は、体温が35℃を下回ると低体温症に陥ります。手足がかじかみ、判断力が低下し、やがて意識を失います。本人は「眠くなる」感覚になるため、危険を自覚しないまま命を落とすケースもあります。
2つ目は「暖を取る手段の危険性」です。寒さから身を守ろうと、室内で炭や練炭、ガス器具を使えば、一酸化炭素中毒のリスクが高まります。換気の難しい冬の室内では、命を守るはずの行為が、逆に命を奪う結果になることもあります。
3つ目は「孤立」です。雪や凍結によって道路が寸断され、物流が止まり、救助が遅れます。山間部や豪雪地帯では、数日間誰とも会えない状況も珍しくありません。「助けが来る前提」で考えた防災は、冬には通用しないのです。
つまり冬の災害とは、「寒さ・暗さ・孤立」という三重苦の中で、どれだけ自分の命を守れるかが問われる状況なのです。

◉私たちは、自然の中で生きている
普段の私たちは、電気・ガス・水道・物流というインフラに守られています。しかしそれは、あくまで「自然の上に張られた薄い膜」のようなものです。地震や大雪、台風ひとつで、簡単に破れてしまいます。
その膜が破れた瞬間、私たちは突然「自然の中で生きる存在」に戻ります。
それは、アウトドアやキャンプをしている人にとっては馴染みのある世界です。寒ければ重ね着をし、風を避け、火を起こし、温かい飲み物を作る。暗くなればランタンを灯し、眠くなればシュラフにくるまる。
一方、そうした経験のない人にとっては、それは突然現れる“過酷な世界”です。
だからこそ、防災は特別な準備ではなく、「自然と付き合う力」を日常の中で育てることなのだと、私たちは考えています。
◉フェーズフリーという考え方
ここで大切になるのが「フェーズフリー」という考え方です。
フェーズフリーとは、「平常時」と「非常時」を分けず、日常で使っているもの・身につけているもの・習慣そのものが、非常時にも役立つ状態をつくるという考え方です。
たとえば、
冬のキャンプで使うシュラフは、停電した夜の命綱になります。
ヘッドライトは、夜のトイレや停電時の移動に役立ちます。
カセットコンロは、暖を取り、温かい食事を作る生命線になります。
特別な防災グッズを揃えなくても、日常の延長に「備え」は存在するのです。

◉冬は、防災を学ぶ最高の季節
私たちは「冬こそ防災の本番」だと考えています。
寒さ、暗さ、雪、孤立。冬は、人が生きるうえで必要な要素――体温、光、食、つながり――がすべて試される季節です。
だからこそ冬に、・体をどう温めるか・火や光とどう付き合うか・誰と、どう助け合うか
を体験的に学ぶことは、そのまま「生き抜く力」になります。

◉怖がるためではなく、生きるために
この連載は、災害を怖がらせるためのものではありません。「備えれば大丈夫」「知っていれば守れる」ことを伝えるための連載です。
冬は厳しい季節です。しかし同時に、私たちに「生きるとは何か」を教えてくれる季節でもあります。
この冬、ぜひ一度だけ、「もし今、電気が止まったら?」「もし今、外に出られなくなったら?」と想像してみてください。
その問いが、あなたとあなたの大切な人の命を守る第一歩になります。
今回の記事では、冬の災害がいかに「寒さ」「暗さ」「孤立」という見えにくいリスクを伴っているかをお伝えしました。そして、その中でも何よりも大切なのが 「体温を守ること」 だということに触れました。
では実際に――もし今、暖房が止まり、電気もガスも使えなくなったとき、私たちはどうやって体を温め、命を守ればいいのでしょうか。
次回・第2回では、「体温を守る。それが冬の防災の第一歩」 をテーマに、
低体温症はどんな仕組みで起こるのか
何を優先して体を温めるべきなのか
家にあるものでできる防寒の工夫
キャンプの防寒知識がなぜ防災に役立つのか
といったことを、具体的に、今日からできる形でご紹介します。
「特別な道具がなくてもできる冬の備え」を一緒に考えていきましょう。
どうぞお楽しみに。
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