フェーズフリーな暮らしとは?― 日常と非常時をつなぐ新しい防災の視点
- akiyuki yamasaki

- 9月10日
- 読了時間: 4分
「防災の備えをしていますか?」と問われると、多くの人が「やらなきゃいけないのは分かっているけれど、なかなか続かない」と答えるのではないでしょうか。非常用持ち出し袋を買ったまま押し入れに眠らせている、期限切れの備蓄品に気づかずに放置している……そんな光景は珍しくありません。
一方で、もしも「普段の暮らしそのものが防災につながる」としたらどうでしょうか?それが今、注目されている 「フェーズフリー」 という考え方です。
◉フェーズフリーとは?
「フェーズ(phase)」とは「平常時」と「非常時」を指します。従来の防災は「平常時=普通の生活」「非常時=災害のとき」と分けて考えるのが一般的でした。
しかしフェーズフリーは、その境界をなくし、「日常で役立つものが、災害時にも役立つ」という考え方を基盤にしています。
つまり「非常用にだけ使う物」ではなく、普段から使える物を選ぶことで、無理なく備えを続けられるのです。

◉フェーズフリーが生まれた背景
日本は地震、台風、大雨など自然災害の多い国です。そのたびに「備えの大切さ」は語られますが、実際に十分な備えをしている家庭はまだ多くありません。
理由の一つは「防災用品=特別なもの」という意識です。普段は使わないから買うのをためらう、使わないから管理が面倒になる……これが備えを遠ざけてきました。
そこで登場したのが「フェーズフリー」。防災を“特別なこと”から“日常の延長”に変えることで、誰もが自然に備えられるようにしようという新しい発想です。
◉世界と日本の事例
世界でも「平時と有事を分けない備え」は少しずつ広がっています。
アメリカ:アウトドア文化の中で、キャンプ用品やRV(キャンピングカー)がそのまま災害時の避難拠点になる
北欧:日常の暮らしに防寒・防火の工夫を組み込み、「防災=ライフスタイル」として根づいている
日本:フェーズフリー認証制度ができ、日常でも使いやすく災害時にも役立つ製品が増えてきた(例:ポータブルバッテリー、折り畳み式家具、保存食など)
こうした流れは、防災をもっと身近にするための大きなヒントとなります。

◉フェーズフリーな暮らしの実例
それでは、具体的にどんな暮らし方がフェーズフリーなのでしょうか。
1. 日用品がそのまま備えになる
モバイルバッテリー … 普段はスマホ充電、停電時は命を守る情報ツール
アウトドアチェア・テーブル … ベランダや庭での団らん、避難所での生活空間改善
ステンレスボトル … 普段の水筒、断水時の貴重な水容器
2. 食事のフェーズフリー
レトルト食品・缶詰 … 普段の食卓に並び、災害時には非常食に
カセットコンロ … 鍋パーティに便利、停電時の調理器具に
冷凍保存食材 … 料理の時短にも役立ち、ライフラインが止まったときに消費
3. 住まいと暮らしのフェーズフリー
ソーラーパネル … 日常の節電、停電時のエネルギー確保
タープやシェード … 普段は日よけ、避難所ではプライバシー確保に
キャンプマット … ピクニックに、避難所での快適な睡眠に
◉フェーズフリー的な思考を育てる
大事なのは「これは災害時にも役立つかも?」と日常の中で考える習慣です。
スーパーで食材を選ぶとき「保存が効くか?」を意識する
レジャー用品を買うとき「停電や断水でも使えるか?」を考える
子どもと遊ぶとき「もし災害があったらどう行動する?」を話し合う
こうした小さな意識の積み重ねが、暮らしそのものをフェーズフリーに変えていきます。
◉フェーズフリーと防災キャンプ
防災キャンプは、まさにフェーズフリーを体感できる場です。
普段はレジャーに使うテントが、避難所生活の快適さを守る
BBQで活躍するバーナーが、停電時の調理に役立つ
夜を照らすランタンが、停電の暗闇を安心に変える
「楽しい体験」が「もしもの備え」になる瞬間を、誰もが実感できます。

◉フェーズフリーは生き方の選択肢
フェーズフリーは単なる「便利グッズの使い方」ではありません。それは 「楽しみながら備える」 という新しい生き方の提案です。
特別なことをしなくても、日常に少し視点を加えるだけで、暮らしそのものが防災につながります。無理なく続けられるからこそ、多くの人に広がり、結果的に社会全体の防災力を底上げするのです。
今回は「フェーズフリー」という考え方を紹介しました。日常と非常を分けないこの発想は、まさに「防災×キャンプ」に通じるものです。
次回は、そのフェーズフリーの実例として、「キャンプ道具は最強の防災グッズ」 を取り上げます。テント、ランタン、バーナーといった身近なアウトドア用品が、災害時にどんな力を発揮するのかを詳しく解説します。
楽しみながら備えるヒントを、ぜひ次回もご覧ください。



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