top of page

防災月間に考える、防災×キャンプの新しいカタチ

更新日:8月26日

◉はじめに ― 9月は防災月間

毎年9月は「防災月間」。日本は地震、台風、大雨、豪雪など、世界でも有数の自然災害大国です。そのため国や自治体、学校や地域団体は、毎年9月に「防災」をテーマとした訓練や啓発活動を行っています。


9月全体が「防災月間」に定められており、これは1923年に関東大震災が発生したことや、台風・地震など大規模な災害が多い時期であることに由来します。9月1日は「防災の日」、9月1日を含む1週間は「防災週間」とされ、災害への意識を高め備えを促進するための様々な啓発活動や訓練が行われます


しかし、皆さんはどうでしょうか?避難訓練に参加しても「ただの形式的なもの」「退屈なもの」と感じた経験はありませんか?備蓄品を準備しようと思っても、忙しさに追われて後回しになっていないでしょうか?

「大事なのは分かっているけれど、なかなか続かない」これが、多くの人が抱える“防災意識の壁”です。

そこで、私たち 日本防災キャンプアウトドア協会 が提案したいのが、「防災×キャンプ」という新しいカタチの防災の取り組み です。


◉防災とキャンプ、一見違うけれど実は近い存在

キャンプと聞くと、多くの人は「自然を楽しむレジャー」を思い浮かべるでしょう。ところが、キャンプに必要なスキルや道具は、実は災害時の生活と驚くほど共通しているのです。

  • テント=避難所や簡易住居の代わり

  • バーナーやストーブ=停電時の調理器具

  • ランタンやヘッドライト=照明確保

  • 寝袋やマット=避難所での睡眠環境改善

  • ロープワーク=物資を吊るす、仕切りを作る

  • 火起こしの技術=電気が止まった際の調理・暖房

つまり、キャンプは「非日常を楽しむアウトドア」であると同時に、災害時のサバイバルをシミュレーションしている行為でもあります。

私たちはこれを「防災キャンプ」と位置づけ、楽しく実践できる新しい学びとして広げています。

ree

◉フェーズフリーという考え方

この取り組みの背景にあるのが「フェーズフリー」という考え方です。

フェーズフリーとは、平常時(通常の暮らし)と非常時(災害時)を切り分けずに、「日常で役立つものは非常時にも役立つ」「普段から使えるものを備える」という思想です。

例えば、

  • 普段はキャンプで使うポータブルバッテリー → 停電時の電源に

  • レジャーで使うタープやシェード → 避難所でのプライバシー確保に

  • アウトドア用の調理器具 → ガスや電気が止まった時の必需品に

つまり「使う=備える」になるのです。防災グッズを倉庫にしまい込んで「いざという時のために眠らせる」のではなく、普段から楽しみながら使うことで自然と防災力が身につく。この考え方が、防災キャンプの根底にあります。

ree

◉防災訓練の課題をどう乗り越えるか

防災訓練と聞いて、多くの人は「並んで避難する」「消火器を触ってみる」といった光景を思い浮かべるのではないでしょうか。もちろんそれも大切ですが、参加する側にとってはどうしても形式的で「受け身」の学びになりがちです。

防災キャンプはその逆。自分で火を起こし、テントを張り、食事を作り、水を確保する。体験そのものが学びになります。

さらに、そこに「楽しさ」が加わることで、子どもも大人も積極的に関わるようになります。「楽しいからやりたい」→「気づいたら防災力が身についている」これが防災キャンプの最大の強みです。


◉家族でできる「防災キャンプ」

防災キャンプは、特別なイベントだけでなく、家族や仲間で手軽に始めることもできます。

例えば――

  • 家の庭やベランダで一晩キャンプをしてみる

  • ガスや電気を使わずに食事を作ってみる

  • 懐中電灯だけで過ごしてみる

こうした小さな体験の積み重ねが、実際の災害時に大きな安心感へとつながります。

また、子どもたちにとっても「遊びながら学ぶ」貴重な経験になります。災害に直面したとき「自分もできる!」という自信は、何よりの力になります。


◉地域で広がる防災キャンプの輪

私たち協会では、全国の自治体や学校、企業、団体から依頼を受け、防災キャンプの出張講座を行っています。

例えば、

  • 小学校での防災体験学習

  • 地域の公園で親子向けのキャンプ防災講座

  • 企業研修としての防災×アウトドアプログラム

参加者からは、「楽しく学べた」「防災の大切さを実感した」「家に帰ってすぐに備えを始めた」といった声が数多く寄せられています。

防災キャンプは単なるレジャーではなく、地域の防災力を底上げする社会活動でもあるのです。

ree

◉災害に強い街づくりへ

大規模災害が発生したとき、行政の支援がすぐに届くとは限りません。最初の数日は「自分たちで自分たちを守る」ことが求められます

そこで必要になるのが「自助」と「共助」。個人が備えること、そして地域で助け合うことです。

防災キャンプは、この両方を自然に育むことができます。家族でのキャンプは自助の力を強化し、地域での防災キャンプは共助の関係を築きます。

結果として、地域全体が災害に強い街へと変わっていくのです。


◉おわりに ― 次回予告

防災月間のスタートに合わせて、「防災×キャンプ」という新しい視点を紹介しました。日常と非日常をつなげ、楽しみながら防災を学ぶことができる防災キャンプは、これからの社会に欠かせない取り組みになるでしょう。

次回は、「災害に強い街づくりは日常から始まる」 自助・共助・公助を、身近なアウトドア体験で学ぶ。お楽しみに!



コメント


bottom of page