医療とアウトドアが交差する場所で ― 災害時に「生き抜く力」を育む研修会を終えて
- akiyuki yamasaki

- 5 日前
- 読了時間: 3分
今回、日本防災キャンプアウトドア協会では、医療従事者、とりわけ日常的に病院で看護師として従事されている方々を対象とした研修会を実施しました。本研修は「災害時にまず自分自身が生き抜くこと」、そして「その先にある被災者支援・医療的ケアをどうつなぐか」を大きなテーマとして構成しました。

災害時に生き抜くための基礎知識から始まる学び
研修初日の前半では、「命を守る5つの要素(空気・体温・水・火・食)」と「3つの法則」を軸に、災害発生直後の混乱した状況下で、何を優先し、どのような判断が生死を分けるのかを解説しました。医療の現場では、整った環境や十分な物資が前提となることが多い一方、災害時にはその前提が簡単に崩れます。そのとき、専門職である前に「一人の人間として生き延びる力」を持っているかどうかが、その後の支援活動の質を大きく左右します。
コーヒーブレイクでは、美味しい非常食のおやつを試食し、「非常時=我慢」という固定観念を見直す時間にもなりました。非常時だからこそ、心と体を少しでも緩める工夫が、長期化する避難生活では重要になります。
タッチケアとアウトドアスキルが示す“もう一つの支援”
中盤では、スウェーデン王立シルビアホーム認定インストラクターによるタッチケア体験が行われました。被災者支援の現場では、医療行為以前に「安心感」をどう届けるかが問われます。言葉が届かない状況でも、触れること、寄り添うことが支援になる。タッチケアは、医療従事者の専門性と、人としての温かさを同時に活かせる支援技術であると強く感じました。
後半のワークショップでは、火おこし、ロープワークによるタープ設営、体温維持の方法など、アウトドアスキルを実践的に体験していただきました。一見、医療とは無関係に思えるこれらの技術ですが、寒さや雨風から身を守ること、温かい食事をつくることは、災害関連死を防ぐ上で極めて重要な要素です。

2日目:臨床推論と災害関連死を防ぐ視点
2日目は、災害支援現場で活かす臨床推論や、災害関連死を防ぐためのアセスメントについて学びました。避難所での生活は、持病の悪化、環境変化によるストレス、適切なケアの遅れなどが重なり、命に関わるリスクを高めます。実際の症例をもとにしたグループワークでは、「気づく力」「つなぐ力」の重要性が改めて共有されました。
医療従事者こそ“生き抜く力”を持つ意味
これまで、アウトドアと医療従事者の間には接点が見えにくいと感じていました。しかし今回の研修を通じて、医療従事者こそ災害時に生き抜く力を身につける必要があること、そしてその力が被災者支援の質を高め、災害関連死を減らすことにつながると強く実感しました。
未曾有の災害が想定されるこれからの時代、専門分野の垣根を越えた連携は不可欠です。アウトドアの知恵と医療の知識が交わることで、新しい災害支援の形が生まれる。今回の研修会は、その可能性を確かに感じる機会となりました。
今後も、分野を超えた学びと実践を通じて、「生き抜く力」と「支える力」を社会に広げていきたいと考えています。



コメント